August 2281997

 定位置に夫と茶筒と守宮かな

                           池田澄子

宮は「やもり」。夏の夜に出てきて、天井や門灯に手をひろげてぴったりと吸いつく。この場合は、ダイニング・ルームの窓ガラスに、外側から貼りついているのである。ここ数日、いつも同じ場所にいる。気色はよくないが、ふと気がつくと、夫もいつもの席、茶筒もいつものところに鎮座しており、なんだかおかしさがこみあげてきた。誰が決めたわけでもないのに、家庭内の人や物が、いつの間にかそれぞれの位置におさまっている面白さ。そこにもうひとつ家庭とは無縁の守宮を加えてみせたところに、作者の面目がある。この句を読んだ「夫」の感想を聞いてみたい。『空の庭』所収。(清水哲男)




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