August 1881997

 白玉やくるといふ母つひに来ず

                           星野麥丘人

玉(しらたま)は白玉餅とも言い、白玉粉を水で練って一口大に丸めて茹であげたもの。江戸時代には、夏が来ると手桶の水に白玉を入れて売り歩いたそうだ。味よりも舌触りを楽しむ。掲句は現代の情景。母親の好物である白玉を用意して待っていたのだが、夜になってもついに彼女は現れなかった。何かあったのだろうか。台所の白玉の白い色が心なしかはかなげに見えてきて、心配は募るばかりである。まだ電話が普及していなかった頃には、こういうことがしばしば起きたものだ。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます