19970817句(前日までの二句を含む)

August 1781997

 遠花火この家を出し姉妹

                           阿波野青畝

ろそろ花火の季節もおしまいである。そんな時期の遠い花火だから、なんとなく寂しい気持ちで、見るともなく見ている。無音の弱々しい光の明滅が、かえって心にしみる。そういえば、この家から出ていった姉妹(あねいもと)は、他郷の空の下でどんな暮らしをしているのだろう。客の作者は家の人には問わず、その消息をただ遠い花火のように思うのである。日常生活のなかで、誰しもが感じるふとした哀感。芝居がかる一歩手前で踏み止まっている。『紅葉の賀』所収。(清水哲男)




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