August 1481997

 踊りゆく踊りの指のさす方へ

                           橋本多佳子

りといえば、俳句では盆踊りのことを言う。秋の季語。踊りの句はたくさんあるが、すぐに気がつくのは、踊りの輪に入らずに詠んだ句がほとんどだということ。男の句になると、昔から特に目立つ。俳人はよほどシャイなのだろうか。たとえば森澄雄の「をみならにいまの時過ぐ盆踊」や鷹羽狩行の「踊る輪の暗きところを暗く過ぎ」など佳句であることに間違いはないが、なんとなく引っ込み思案が気取っているような恨みは残る。その点で、この句には参加意識が感じられる。傍見しているとも読めるけれど、踊りの輪の中の実感と読むほうが面白い。この指のクローズアップは踊り手ならではの感覚から出ているのだと思う。「方へ」は「かたへ」と読む。(清水哲男)




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