August 0281997

 我に残る若さ焼ソバ汗して喰ふ

                           中嶋秀子

だ冷房もさほど普及していなかった昭和四十年頃の作品。前書に「生花教室の生徒と」とある。焼きそばを出すような店では、扇風機があればよいほうだった。そんな暑さなど苦にしない若い生徒たちに誘われて、真昼の焼きそばに付き合ってみたら、意外なことに食が進む。そのうちに、吹き出る汗を拭いながら食べるという行為そのことに、快感すら覚えてきた。私にも、こんな若さが残っていたのだ……という喜び。だから「食べる」のではなく「喰ふ」のほうがふさわしいのだ。ただし、このとき作者は三十歳。女盛りの年代だが、若い人たちに囲まれると、その若さがまぶしく映りはじめる年頃ではあるだろう。『花響』所収。(清水哲男)




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