July 3171997

 黄泉路にて誕生石を拾ひけり

                           高屋窓秋

泉路(よみじ)は冥土へ行く路。冥土への途中で、皮肉にも誕生石を拾ってしまったという諧謔。年齢的に死の切迫を感じている人ならではの発句だが、その強靱な俳諧精神にうたれる。最近の私は時折、若くして逝った友人の誰かれを思い出す。なかには常に心理的に私をおびやかす人もいたが、時の経過というフィルターが、いつしかそんな関係を弱め忘れさせてしまう。よいところばかりを思い出す。彼らもまた、黄泉路で何かを拾っただろうか。この世ではみんな運が悪かったのだから、せめて何かよいものを拾って冥土に到着したと思いたい。『花の悲歌』(1993)所収。(清水哲男)




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