July 2771997

 花火師か真昼の磧歩きをり

                           矢島渚男

は「かわら(河原)」。今夜花火大会の行なわれる炎熱の河原で立ち働く男たち。花火師を詠んだ句は珍しい。中学三年のとき、父が花火屋に就職し、私たち一家は花火屋の寮に住むことになった。だから、花火や花火師についての多少の知識はある。指の一本や二本欠けていなければ花火師じゃない。そんな気風が残っていた時代だった。工場で事故が起きるたびに、必ずといっていいほど誰かが死んだ。花火大会の朝は、みんな三時起きだった。今でも打ち上げ花火を見ると、下で働く男たちのことが、まず気になってしまう。(清水哲男)




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