July 2671997

 全員に傘ゆきわたる孤島かな

                           永末恵子

人島に大勢で漂着して、まずは手際よく全員に傘が配られた。これでとりあえず雨露だけはしのげるわけだが、なんだか変だ。もっと先に、配布すべき何かがあるような気がする。でも、それが何なのかは、なかなか浮かんでこない。全員が傘を手にしてポカーンとしている様が、なんとも滑稽だ。孤島漫画のコレクターだった星新一さんに、たくさん見せていただいたことがあるが、ポカーンとしたものにいちばん味わいがあった。この句も、立派な漫画になっている。無季。「ミルノミナ」(第2号・97年7月)所載。(清水哲男)




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