July 1471997

 珍しいうちは胡瓜も皿に盛り

                           作者不詳

戸中期の川柳。胡瓜(きゅうり)は夏が旬で、初物はかくのごとくに珍重された。だが、それも束の間で、だいたいが見向きもされなかった食べ物らしい。なにせ、とてつもなく苦かったからだ。庶民の食卓にさえ、のぼることは稀だったという。そういえば、私が子供だった昭和二十年代になっても、ていねいに皮をむかないと、とてもじゃないが苦くて食べられない品種もあった。貝原益軒は「瓜類の下品なり」と『菜譜』に書き、「味よからず。かつ小毒あり」と追い討ちをかけている。したがって、江戸の人はこの句ににやりとできた。でも、これからの時代の人には、この作がなぜ川柳なのかもわからなくなってしまうのだろう。『俳風柳多留』所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます