July 1271997

 古着売り緑蔭にひろぐ婚衣裳

                           藤田直子

者が思わずも古着売りの前で立ち止ったように、句集のなかのこの句の前では立ち止らざるを得ない。緑陰にひろげられた婚礼用の衣裳は、和風であれ洋風であれ、純白のものだろう。木々の緑との対比が、まぶしいほどに目に鮮やかだ。そこまではよい。が、戦後の混乱期ならいざ知らず、これは現代の光景だ。だから、作者と同じように読者もここで立ち止るのは、すぐにひとつの素朴な疑問がわいてくるからである。いったい、どんな人が何のために古着の花嫁衣裳などを買うのだろうか。思いつく答えとしては、劇団関係者が舞台用に求める可能性はあるという程度だ。今度古着屋さんに出会ったら、ぜひとも質問してみたいと思う。『極楽鳥花』所収。(清水哲男)




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