July 1171997

 寝冷えして電話して来し男かな

                           皆吉 司

代的滑稽の世界。「そんなことで電話してくるなよ」と言いながらも、作者は微笑している。私は電話が苦手だから、とてもこんな電話はかけられないが(そのつもりにもならないが)、若い人にとっては格別どうということはないのだろう。そのうちに携帯電話の句も登場してくるにちがいない。いつも誰かと話していたい欲望はわからないでもないけれど、裏返せばそれは寂しさの簡便なごまかしに通じているのであって、あぶなっかしい処世の術に思える。あと五十年もすると、老齢人口が三分の一を占める時代になるそうだ。寝冷えした孤独な老人の電話を聞いてくれる商売が必要となる。『夏の窓』所収。(清水哲男)




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