July 0971997

 髪長き蛍もあらむ夜はふけぬ

                           泉 鏡花

かにもお化け好きの鏡花らしい句。明滅する蛍の舞う奥の闇に不気味を感じる人はいても、蛍そのものに感じる人は稀だろう。髪の長い蛍という発想。それだけで、一度読んだら忘れられない作品だ。作者は、あるいは女性の姿態を蛍に見立てたのかもしれないが、それでも不気味さに変わりはない。一種病的な感覚だと思う。病的といえば、鏡花の食中毒恐怖症もすさまじいもので、大根おろしも煮て食べたというほどだ。『鏡花全集』所収。(清水哲男)




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