July 0871997

 米足らで 粥に切りこむ 南瓜かな

                           森 鴎外

が乏しいので、南瓜を多めに入れた粥を炊いた。茶碗によそってみると、南瓜が粥に切りこむような存在感を示している。明治の作品だが、戦後の食料不足を知る私などには、身につまされる句だ。南瓜ばかり食べていて、我が家ではみんな黄色い顔をしていた。それにしても、鴎外(「鴎」は略字)に俳句があるとは驚きだった。飯島耕一の『日本のベル・エポック』ではじめて知った。飯島さんに言わせれば「鴎外の句は、いかにも抒情詩的俳句で、どうやら句としての味にも深みに欠けるし、漱石には色濃くあった滑稽味もまったくない」と散々である。『うた日記』所収。(清水哲男)




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