19970703句(前日までの二句を含む)

July 0371997

 子に土産なく手花火の路地を過ぐ

                           大串 章

い父親の苦い心。父となった者には、だれしもが経験のあるところだろう。ぴしゃりとその核心をとらえている。なべて名産品などというものには大人向きが多いから、小さな子への土産選びは難しい。いろいろ考えているうちに、今回はパスということになったりする。が、そうした場合、我が家が近くなってくると、たいてい後悔する。どんなにちゃちな土産でも、買ってくればよかった……。近所の子供たちが花火で楽しそうに遊んでいるというのに、我が子は家にいてひたすら父の帰りを待ちかねているのだ。などと、うしろめたさは募るばかり。さあ、言い訳をどうしたらよいものか。『朝の舟』所収。(清水哲男)




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