June 2361997

 短夜や壁にペイネの恋かけて

                           上田日差子

春俳句の傑作。「恋かけて」という言い回しが、とても新鮮だ。短夜(みじかよ)を恨みたくなるほどに、青春の時は過ぎやすい。比べて、レイモン・ペイネの描いた恋人たちの永遠性はどうだろう。見れば見るほど、羨望の念がつのってくる。と同時に、みずからの恋する心が満たされる日のことも画像に重なってくるのだから、またしても壁のペイネを見やってしまうのである。いいですね、この乙女心は。技巧を感じさせない句の素直さで、なおさらに。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます