May 2851997

 真清水も病みて野をゆく初夏よ

                           沼尻巳津子

の季節のさわやか(もっとも「さわやか」は秋の季語だけれど)な「真清水」と「初夏(はつなつ)」との取り合わせ。そこに、作者は病的な照明をあてている。「も」という助詞に注目せざるをえないが、このとき、作者は病身なのだろう。常識を裏切った句というよりも、自分の感性に忠実な句。身体が弱っていると、世の溌溂としたもの全てが疎ましくなる。が、この句。発熱の悪寒から解放されたときのような清々しさも湛えている。不思議な句境だ。なお、考えてみたい。『華彌撒』所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます