May 2151997

 皮を脱ぐ音静かなり竹の奥

                           如 洋

頃の竹林に入ると、竹の皮の落ちる音がしているはずだ。「はらり」でもなく「ばさり」でもなく、その中間の微妙なかそけき音。小学生の頃には、よく真竹の皮をひろいに行った。おにぎりなど、いろいろな物を包むのに使うためだ。都会では、肉屋さんの必需品でもあった。まさにこの句の言うとおりで、ときおり皮を脱ぎ落とす音がすると、子供心にも神秘的な感じを受けたものである。加えて、土のしめった感触や匂いなどにも……。ところで、私がいま住んでいる東京の三鷹は、埼玉の所沢と並んで、関東地方の細工用の竹の一大産地だったそうである。昨日の放送スタジオで、コミュニティセンターで「竹とんぼ」教室を開いているゲストの方からうかがった話だ。なお、竹の皮の品質のよさでは、なんといっても京都嵯峨野産が有名である。いや、有名であった。(清水哲男)




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