May 2051997

 子育ての大声同志行々子

                           加藤楸邨

声でヨシキリが鳴く小川に沿う道が我が通勤路。子育て真最中の行々子の鳴き声がしきり。会話の中味は、ひなの成長の自慢話しか、托卵されかっこうのひなの里親になった不運への愚痴か、はたまた、治水と称して河原の安住の葦原を侵略する人間への恨みごとか。にぎやかな行々子の声を聴きながら、亡き妻との子育ての昔を振り返る作者の姿が目に浮かぶ。遺句集『望岳』所収。(齋藤茂美)




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