May 0751997

 噴水の頂の水落ちてこず

                           長谷川櫂

るほど、噴水のてっぺんの水は落ちてこない(ように見える)。「それがどうしたの」と言われても困るが、作者はそう観察したからそう詠んだまでで、句に過剰な意味を背負わせているわけではないだろう。でも、読者のなかには「引力の法則を抜け出た水の様子が、作者の精神的超越志向を表現している」と評する人もいる。そんなふうに読んでもいいけれど、おもしろくはない。こういう句は、そのまま受け取っておくにかぎる。この句を一度知ったら、噴水を見るたびに頂(いただき)の水の様子が気になってしまう。それでよいのである。『古志』所収。(清水哲男)




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