May 0651997

 銀行員等朝より蛍光す烏賊のごとく

                           金子兜太

ールデン・ウィークが終わって、オフィス街にも日常の顔が戻ってきた。すぐに慣れてしまう光景だが、朝のうちはまだ新鮮な感じを受ける。昨日までシャッターを下ろしていた銀行の内部を、見るともなく見ると、いつもと変わらぬ情景が認められ、なんとなくホッとする気分。作者は日本銀行に勤務していたから、これは内部者から見た銀行の姿だが、連休明けの街を行く市民の気持ちにも合うような気がする。人間が「烏賊(イカ)」のように蛍光するという独特な観察が、私にそんなことを連想させるのだろう。戦後俳句界を震撼させた話題作にして、兜太の代表作だ。『金子兜太句集』(1961)所収。(清水哲男)




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