April 3041997

 永き日のにはとり柵を越えにけり

                           芝不器男

間でいちばん日照時間が長いのは夏至だが、俳句では「永き日」を春の季語としてきた。ゆったりとした春の日の実感からきたものだろう。ちなみに、夏は夜に焦点を移動して「短夜(みじかよ)」という季語を使う。このあたりの私たちの微妙な感覚は、外国人にはなかなか理解できないかもしれない。ところで、この句。ありのままの情景を詠んだものだが、無音のスローモーション・フィルムを見ているようで、句全体が春の日永の趣きを的確に描出している。句は忘れても、このシーンだけはいつまでも脳裏に残りそうだ。(清水哲男)




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