April 1441997

 濯ぎ水あふれ細紐生きはじむ

                           今井真子

濯機なんてなかったから、学生時代にはタライで下着などを洗った(下宿のタライの裏側には、私の生年と同じ購入年度が墨で書かれていた)。暖かくなってくると、水仕事も楽になる。そんな嬉しさが、この句には溢れているようだ。濯ぐために勢いよく水を注ぐと、脇役の細紐が主役のような顔をして踊りだす。そんな些事をとらえて、大きな自然の変化を表現した作者の感性が素敵だ。いわゆる季語は使われていないけれど、句全体が春の輝きのなかにある。『水彩パレット』所収。(清水哲男)




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