April 1341997

 人間へ塩振るあそび桃の花

                           あざ蓉子

からない。蓉子には、不可解句が多い。だが、どこか気になる。作者は言う。「言葉は概念である。その概念を俳句定型内で組み合わせると、その組み合わせによっては、言葉が別の意味に移ろうとして立往生することがある。このもどかしい像は、これからの俳句の一つの可能性かもしれない」(『21世紀俳句ガイダンス』現代俳句協会青年部編)。すなわち、俳句の伝統を破るのではなく、そのなかで遊んでしまおうという考えだ。餅を搗く臼で、たとえば金魚を飼うがごとくにである(古道具屋で聞いた話だが、実際にそうしているアメリカ人がいるという)。つまり作者は、それほどに俳句という頑丈な様式を信頼しているということだろう。「人間」と「塩」と「桃の花」。それこそもどかしくも、気になる一句ではある。『ミロの鳥』所収。(清水哲男)




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