April 0341997

 春泥に押しあひながら来る娘

                           高野素十

かるみを避けながら、作者は用心深く歩いている。と、前方から若い女性たちのグループがやってくる。陽気なおしゃべりをかわしながら、互いの体を押し合うようにして軽やかにぬかるみを避けている。そんな溌溂とした娘たちの姿は美しく、そして羨ましい。春の泥も、日にまぶしい。若さへの賛歌。私も、こういう句のよさが理解できる年令になってきたということ。ちょっぴり寂しくもある。(清水哲男)




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