March 2431997

 見返れば寒し日暮の山桜

                           小西来山

といえば、京都祇園の枝垂桜(糸桜)や東京九段などの染井吉野が有名だ。これらは、観賞用に開発された品種である。まことに素晴らしい景観を供してくれるが、一方で、野生の山桜の姿も可憐で美しい。山陰に住んでいた子供の頃、近くの小山に一本だけ山桜があった。山桜は、若葉と同時に開花する。子供だから、とくに感じ入って見ていたわけではないが、この句のようにどこか愁いを含んだ花時のことが印象に残っている。あの老木は、現在どうなっているのだろうか。有名な奈良吉野山の山桜は、残念なことに、写真でしか見たことがない。作者の来山(1654-1716)は大阪の人。由平、のちに宗因門。(清水哲男)




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