March 2031997

 嫁して食ふ目刺の骨を残しつつ

                           皆吉爽雨

の字は「か」と発音する。二世代(ないしは三世代)同居の家に嫁いできて、まだお客様待遇の間の新妻の膳に目刺しが出された。さあ、困った。いきなり頭からバリバリやるのははしたないし、かといって残すのも気がひける。結局は、少しずつ端から小さく噛んで、骨を残しながら食べることにした。まさに、新妻悪戦苦闘の図。「味なんてしやしない」。そして、その姿を見るともなく見ている家人(作者もそのひとりだ)の鋭い目。いまどきの若い女性なら、頓着せずに食べてしまうのかもしれないが、昔の嫁たるものはかくのごとくに大変であった。蛇足ながら、作者の皆吉爽雨は、私が中学生のときに下手な句を投稿していた「毎日中学生新聞」の選者だった。よく採っていただき、いい人だなと思っていたけれど、この句のように、けっこう意地悪な目も持ったオジサンでもあったわけだ……。現代俳人・皆吉司の祖父。(清水哲男)




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