March 1731997

 韮青々と性欲純粋と思う

                           夏木陽子

は「にら」。ユリ科の多年草。というよりも、<レバニラ炒め>でおなじみの植物。句には、みずからの欲望と正対する姿勢が、韮の青さに託されてきっぱりと表現されている。若くあることの素晴らしさ。直球的感覚表現。性を曲球的に感じはじめるのは、個人差もあるだろうが、不惑の前後くらいからだろうか。このところ、渡辺淳一の『失楽園』が話題になっている。文体の甘さは気になるけれど、中年の性を直球的にとらえかえした労作だと思う。「こんなことをしていると、わたし達、地獄に堕ちるわよ」。ヒロイン凛子の直覚が、全巻を引っ張る。(清水哲男)




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