March 1031997

 手を拍つて小鮒追ひこむ春の暮

                           大串 章

ずは作者自註より。「小川に鮒の群を見つけると、手を打ち鳴らして石垣の穴に追い込む。ころあいをみて、その穴の中に手をつっこんで鮒を捕る」。学校帰りだろうか。私も、よく小川で遊んだ。唱歌の文句のように川水はサラサラと流れており、水の中を覗いているだけでも飽きることはなかった。小さな魚と小さな植物たち……。なかでも、私は岩蔭に住む蟹たちの剽軽な動きが好きだった。ただ、残念なことに、この句のような鮒の捕獲法があることは知らなかった。ずいぶんと楽しそうだ。なお「春の暮」は春の夕刻の意。春の終りを言う「暮春」などとは区別する。(清水哲男)




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