February 2221997

 トンネルを出るたびに溪春浅し

                           八木林之助

この鉄道だろうか。トンネルを出るたびに、パッと視界は明るくなるが、その明るさのなかにある溪谷には雪が残っており、まだ春色は出そろってはいない。これでは、旅先の寒さが思いやられるというものだ。誰もが一度は体験したような懐しい光景。それをスナップ写真的にではなく、動きのあるムービー的にとらえたところが、作者の腕のよさである。こんな句を読むと、どこか遠くへ行ってみたくなりませんか。「溪」は「たに」。(清水哲男)




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