February 1221997

 東京は我が敗北の市街地図

                           斎藤冬海

験。その是非を論じる大人たちをよそに、時代の流れには抗うスベもなく、若い私は苦すぎる「敗北」を一度ならず味わった。傷が癒えるまでには、十年という歳月が必要であった。もとよりこの句の作者の「敗北」の中身は知るよしもないが、受験に限らず、東京は多くの敗北者を生み続けてきた街でもある。その意味で、この作品は作者の個人的な体験を越えた普遍性を持つ。この無季句に、季節を感じざるを得ない読者は少なくないはずである。(清水哲男)




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