January 1811997

 行きずりの銃身の艶猟夫の眼

                           鷲谷七菜子

舎の友人には、冬場(農閑期)の猟を楽しみとしている者が多い。猟犬を連れて山に入り、野兎などを撃つ。今では行なわれていないだろうが、私が子供だったころには、学校全体で兎狩をやったものだ。そういう土地柄だ。小さいときから、猟銃には慣れている。そして、ひとたび鉄砲を肩にすると、男たちは人格が変わる。浮世のあれこれなどは、いっさい考えない。ひたすらに、見えない獲物を求めつづけるだけだ。そういう「眼」になる。この句は、そういう「眼」のことを言っている。行きずりの「女」なんぞは眼中にないという「眼」。かえって、それが頼もしくも色っぽい。(清水哲男)




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