January 1511997

 徴兵も成人の日もないまんま

                           小沢信男

イツから帰国中の娘が、今年は配偶者の弟が徴兵にかかるのだと言う。一年の兵役義務だ。ドイツにかぎらず、世界の多くの国の若い男たちは、その青春の日々の一定期間を軍隊で過ごさねばならない。敗戦前の日本でもそうだった。句の前書に「昭和二年生まれ」とある。作者は敗戦で徴兵は逃れたのだが、「成人の日」が制定される前に二十歳は過ぎてしまった。生まれあわせがよかったような、そうでもないような……。この世代独特の苦笑である。『昨日少年』所収。(清水哲男)




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