January 1311997

 北風やあをぞらながら暮れはてゝ

                           芝不器男

風が吹き抜けるたそがれ時。夕陽はすでに山の端に沈んでしまったが、強風のせいで一片の雲もない青空が、なお天空には輝いて残っている。あまりの寒さに、火が恋しく、人も恋しい。青空は見えているけれど、もはや風景は「暮れはてゝ」いるのと同じことだ。ここにあるのは、論理的には形容矛盾の世界であるが、心象的には身にしみるような真実のそれである。北風の強い日には、よくこの句を思いだす。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます