January 1211997

 コック出て投手の仕草松の内

                           北野平八

西では、十四日までが松の内。界隈では名の通ったレストランの裏口のほうの道だろう。年末年始にほとんど休みのなかった男が、束の間の休憩時間、コックの姿そのままに投手の仕草で身体をほぐしている。よく見かける光景ではある。そこを見逃さずにタイミングよくシャッターをきった作品だ。が、加えてこの句の場合、それだけではなくて、仕草の「草」と松の内の「松」という漢字の響きあいが実によく利いている。松の内も、そろそろ終りという雰囲気。これは作者のあずかり知らぬ効果かもしれないが、いずれにしても翻訳はできない句のひとつだろう。もちろん、それでイイのである。『北野平八句集』所収。(清水哲男)




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