January 0511997

 きやうだいよ羽子板の裏を向け合はす

                           瀧井孝作

ざ、真剣勝負という図。「きやうだい」は「姉妹」。こうした正月風景は、まず見られなくなった。そのことを、しかし私は少しも悲しまない。こんなにも可憐で恰好のよい女の子たちの姿を、かつて目撃したことのある幸運を、独り占めにしておきたい気持ちからだ。瀧井孝作は『無限抱擁』などで知られた著名な小説家。最晩年の作家を、一度だけ新宿のKDDビルでお見かけしたことがある。孤高の人。そんな印象だった。そして、この句の姉か妹かは知らねども、私が通っていた立川高校の一年先輩として、まぎれもない瀧井家のお嬢さんが在籍されていたことも懐しい。(清水哲男)




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