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December 27121996

 真顔して御用納の昼の酒

                           沢木欣一

用納め、仕事納めの日には、ほとんど仕事らしい仕事はない。出勤して机の上などをきれいにしているうちに、半日が経ってしまう。昼ごろになると、部署ごとに全員が集まり、エラい人が年末の挨拶をして乾杯の運びとなる。宴会ではないから、みな「真顔」だ。そして半刻もすると三々五々退出していくのだが、なかに「真顔」の酒に火をつけられた何人かで、これから街に繰り出そうという相談がまとまったりする。サラリーマン時代の私は、常に後者であった。(清水哲男)


December 28121998

 掛けかへし暦めでたし用納

                           佐藤眉峰

納は、その年の仕事を終わること。民間会社では「仕事納」と言い、官庁では「御用納」と言う。この日は残務を処理したり、机上などを片付けたりしてから、年末の挨拶をかわして早めに帰宅する。私が雑誌社に勤めていたころには、会社に歳暮で届いたビールや酒で昼前に乾杯するのが習慣だった。で、さっとすぐに引き上げていくのは故郷に帰る人や旅行に出かける人たちで、いつまでもグズグズしているのは、帰ったところで何もすることがない独身組だった。もちろん、私は後者。それはともかく、よく気がつく人のいる会社では、句のように、この日、暦が来年のものに掛けかえられる。新年初出社のときに古いカレンダーがぶら下がっていたのでは、興醒めだからだ。そして、新しい暦に掛けかえられると、年内にもかかわらず、たしかに一瞬「めでたし」という気分になるものだ。平凡なようだが、情緒の機微に敏感な作者ならではの句である。そしてまた、このときに捨てられる今年の暦は「古暦」と言われ、冬の季語にもなっている。正確に言えばまだ使える暦なのに「古暦」とは、面白い。ではいったい、年内のいつごろから「今年の暦」は「古暦」となるのかと悩んだ(?)句が、後藤夜半にある。「古暦とはいつよりぞ掛けしまま」。(清水哲男)


December 28121999

 ひねもすを御用納めの大焚火

                           今井つる女

いていの職場では、今日で年内の仕事を終了する。といっても、実質的には普段の仕事とは異なり、得意先への挨拶回りや、句のように大掃除をして過ごす職場がほとんどだろう。それも、大半が午前中で終わってしまう。句のように、昔は街のそこここで焚火が見られ、年末気分がいっそう高まったものだが、現在は「どんど焼き」までが目の敵にされる世の中。なかなか「ひねもす」の大焚火など見られなくなった。幸いなことに、我が家の近所にある小さな工場では、委細構わずに派手に焚火をする。何を作っているのかはわからないが、普段でもときどき焚火をしているので、相当な木くずが出るようだ。したがって、例年の仕事納めの日には、とにかく盛大に一日中燃やしつづけるのである。その場を通りかかるのが、いつしか私の年末の楽しみになってしまった。通りかかるだけで、顔がかっと熱くなる。しばらく立ち止まって、燃え盛る炎を見つめるのは快楽と言ってもよい。さて、このページに職場からアクセスしてくださっている皆さまとは、しばらくお別れですね。一年間のご愛読、ありがとうございました。よいお年をお迎えくださいますように。(清水哲男)




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