December 12121996

 踊り子と終の電車の十二月

                           清水基吉

電車に乗っているのだから、踊り子といっても、場末のキャバレーあたりで踊っている女だろうか。一見派手な身なりだが、いかにもくたびれた風情が、十二月のあわただしさ、わびしさの暗喩のようにも見えてくる。このとき、もとより作者自身も、うらぶれた心持ちにあるのだろう。その他大勢の人々の、なにやら切ない感情を乗せて、終電車は歳末の闇の中を走りつづける……。戦後間もなくの日本映画の一場面のようだ。『宿命』所収。(清水哲男)




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