December 05121996

 たしかに四個霧夜武器売る会議の灯

                           五十嵐研三

の句は、金子兜太『現代俳句鑑賞』(飯塚書店)で知った。なにやらスパイ小説めいた雰囲気のある作品で、俳句にしては珍しい題材をよんでいる。同書での兜太の弁。「詩の場合、とくに韻文で書く場合はなにかの感じを伝えればいいわけだね。それにリアリティがあればいいんだ。この句にはリアリティがあると思う。現実感がね、不気味さに、嫌らしさに。その中心は『たしかに四個』だ。……」。ちょっとした現実の光景を想像力で変形した作品といえるが、たしかに私にも奇妙なリアリティが感じられる。「これが俳句か」ということになると、たぶん議論は大きく別れるだろうけれど。(清水哲男)




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