December 02121996

 手から手へあやとりの川しぐれつつ

                           澁谷 道

やとり遊びの「川」は、基本形である。いくつかのバリエーションがあって、どんな形からも簡単に「川」に戻すことができる。で、困ったときには「川」に戻して相手の出方を待つ。そうすると、相手もまた違う「川」をつくって「どうぞ」という。将棋の千日手みたいになってしまうことが、よく起きる。そのようなやりとりに、作者は時雨を感じたというのである。女の子の他愛無い遊びに過ぎないけれど、そこに俳人は女性に特有の運命を洞察しているとも読める。『素馨』所収。ちなみに「素馨(そけい)」は、ジャスミンの一種。(清水哲男)




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