December 01121996

 駅時計の真下にゐたり十二月

                           北野平八

段であれば、そんなところにいるはずもないのに、気がついたらそんなところにいたという図。駅舎での待ち合わせだろう。何か、追い立てられるような気持ちで人を待っている。そのうちに苛々してきて、構内をうろうろしているうちに、ふと見上げると真上に大時計。知らぬ間に駅舎の真ん中に立っていたというわけだ。せわしない師走ならではの振るまいである。さりげない光景だが、この季節、誰にでも納得できそうな句。『北野平八句集』所収。(清水哲男)




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