November 28111996

 母が家の布団の重き朴落葉

                           森賀まり

さしぶりの実家。おふくろの味など、実家を感じる要素にはいろいろとあるが、夜やすむときの布団の重さもそのひとつだ。まだ隙間風が入ってきた時代にこしらえた布団だから、分厚くて重いのである。遅寝して目覚めると、よい天気。早速、その重い布団を干そうと庭に出てみれば、大きな朴の落葉が何枚も……。布団と朴落葉のイメージは、質感も含めてどこかで類似しており、いま実家にあることの不思議な幸福感に、作者は満足しているようだ。この人の感性は鋭く、しかし表現は実に柔らかい。『ねむる手』所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます