November 13111996

 銀杏散るまつたヾ中に法科あり

                           山口青邨

台は東大の銀杏並木。ラジオでこの句を紹介したことがあって、聞いていた友人の松本哉が「ほうか」の音を「放歌」と理解して大いに共感したのだった。ところが後に「法科」だと知り、「なあんだ、つまらない」ということになった。このことは、もはや絶版の彼との共著『今朝の一句』(河出書房新社・1989)で、口惜しそうに当人が書いている。絵葉書的にはかっちりとよくできてはいるが、「東京帝国大学万歳」のエリート意識を嫌だと思う人には、たしかに嫌な感じだろう。ラジオで話すのも大変だが、散る場所によっては銀杏もなかなか大変である。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます