November 07111996

 鵞鳥の列は川沿ひがちに冬の旅

                           寺山修司

山修司の句の特徴のひとつは、情景の大胆な位置づけにある。まさか鵞鳥が旅に出るわけはないが、そのよちよち歩きの行列を目にして、ひょいと「冬の旅」と位置づけてみせている。言われてみると、なるほど「冬の旅」に思えてくるから、読者としては嬉しくなってしまう。大胆な位置づけにもかかわらず、イメージの飛躍に無理がないのである。修司十代の作品。彼は、つまりはじめから演劇的な空間づくりの才に秀でていたのだった。『われに五月を』所収。(清水哲男)




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