November 04111996

 萩ひと夜乱れしあとと知られけり

                           小倉涌史

い風の吹き荒れた翌朝、普段は地味で清楚な花の姿も、さすがに乱れに乱れたままの風情である。ただ、それだけのこと。……と、この句を読み終える人は、まず、いないだろう。萩の姿を女性のそれに重ねるようにして、人間臭く読みたくなってしまう。作者の計算はともかくとしても、俳句そのものの力が、そのような方向に読者を誘惑するのである。そしてもちろん、この場合、作者はその力をよく知っている。『落紅』所収。(清水哲男)




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