October 13101996

 夏草やベースボールの人遠し

                           正岡子規

苦しい「夏草」の季節はとっくに終ったが、「ベースボール」の方は日に日にアツくなるばかりで、巨人かオリックスかとかまびすしい限りだ。子規は俳人歌人の中では最初の野球狂ともいうべき人物で、明治二十年には「ベースボール程愉快にてみちたる戦争は他になかるべし」(「筆まかせ」)などと書いている。子規が「ベースボール」を「野球」と翻訳したというのは誤伝だが、野球に熱心で各ポジションの名称を翻訳したのは事実だ。子規の訳語中、打者(バッター)や四球(フォアボール)は今も生きているが、攫者(かくしゃ・キャッチャー)や本基(ほんき・ホームペース)はアウトということになる。(大串章)




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