October 111996
掌の中に持ちゆく気なき木の実かな
北野平八
掌は「て」と読ませる。作者は、このときひとりではない。女性といっしよに公園か林の道を歩いている。会話も途切れがちで、ぎくしゃくとした雰囲気の中、落ちていた木の実を拾ってはみたものの、その場をとりつくろうためだけの行為であった。どうして俺はこうなんだろうか。……と、実は作者の意図は他にあったのかもしれないが、私としては、こんな具合に読んでしまった。若いころの思い出に、ちょっとだけ似たシーンがあったものですから。『北野平八句集』所収。(清水哲男)
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