October 07101996

 静脈の樹が茂り合う美術館

                           吉田健治

術館に出かけていくのは、館内に展示されている美術品を見るためである。しかし作者は入館の前に、美術館それ自体をまず「作品」として捉えている。とりたてて奇抜な発想ではないけれど、そして「静脈の樹」云々は作者の感性に属する事柄だとしても、美術館を訪れる人の誰しもが抱く思いのひとつを描いてみせた目は鋭い。「そう言われれば、そうだよね」という感じ。これが俳句の面白さだ。この句を読むと、ひさしぶりに美術館に行きたくなってきませんか。「抒情文芸」創刊20周年記念・最優秀賞受賞作品(選者・三橋敏雄)の内。(清水哲男)




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