October 04101996

 小坊主と酒買ニ行くとんぼ哉

                           中村掬斗

われた情景。そして哀歓。いまでは、未成年者には酒を売ってくれない。作者は医を業とした「一茶十哲」のひとりである。といっても、「芭蕉十哲」はつとに有名であるが、「一茶十哲」とは、はてな。手元の栗山純夫編『一茶十哲句集』(信濃郷土誌出版社・昭和17年)によれば、村松春甫という人が「かの蕪村描くところの芭蕉十哲に擬して十人の肖像を描き、それに各自が賛をした」一幅があるのだそうな。ただ間抜けなことに、このなかには先生の一茶自身も含まれているという。たった八十ページのこの本は、いろいろな意味で面白い(昔から、千曲川をはさんで東西の人々は仲が悪いだとか……)が、こういう世界に素人がハマッてしまうと抜け出せなくなりそう。(清水哲男)




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