September 2691996

 二の腕に声染みついて妊りぬ

                           春海敦子

性ならではの作品。男にはつくれない。発想らしきものも、絶対に浮かんではこないと思う。「妊りぬ」と、あるからではない。「声染みついて」がポイント。妊娠の句ならば、他にもいろいろとあるが、これほどに官能的な味わいを残しているものは見たことがない。悦楽の果ての現実を、いささか不良的な目で突き放してみせた力量は相当なものだ。ま、これ以上の野暮は言うまい。「お見事」の一語に尽きる。『む印俳句』所収。(清水哲男)




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