September 231996
ひらきたる秋の扇の花鳥かな
後藤夜半
花鳥は花鳥図。中国的な派手な図柄が多い。秋にしては暑い日、目の前の女性が扇をひらいた。見るともなく目にうつったのは、見事な花と鳥の絵。ただそれだけのこと。と、受け取りたいところだが、ちょっと違う。ポイントは、扇をひらいた女性が、その華麗な花鳥図の雰囲気にマッチしていないというところにある。「秋の扇」には「盛りを過ぎた女性」の意味もあるのだという。といって、作者が意地悪なのではない。抗うことのできない残酷な現実を哀しんでいるのだ。『青き獅子』(1962)所収。(清水哲男)
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